誰かが言った小鳥の夢だと

かがった小鳥だと

帯文より
【大ヒットして映画化される、一躍人気作家の仲間入りした作品】
気になる彼は暗殺者?
記憶を失った青年の身辺調査をしたいと名乗り出たお節介な継美。最初は興味本位で彼に張り付いていたのだが、彼の素性はいくら調べてもわからない。そして興味はいつしか恋心へ……叶わぬ思いにひた走る継美の想いは届くのか!

作品内容(本文抜粋)

『森林浴は癒しがたくさん見つかるんです』
 だが、趣味の森林浴中に継美が見つけたのは、血だらけの男性だった。

「えっ……記憶がないんですか? じゃあ名前も?」

 継美が見つけた男性は救急搬送され、命は助かったものの一切の記憶を失っていた。彼は毎日窓の外を物憂げに眺め、思い悩む。そんな彼を元気づけようと言葉を交わしていくうち、継美の中で彼女のお節介癖が炸裂する。

「あなたの記憶は……あなたの過去は私がみつけます!」

 持ち前の行動力で彼の身辺調査を始める継美。友人の記者に協力をしてもらいながら調べるが……彼に関する一切のことが出てこない。不自然なほどに——
 毎日、入院中の彼を見舞いながら彼のことを探る継美。だが、いつまで経っても彼の身元どころか名前すらわからない。そのまま時は過ぎ、やがて彼は病院から姿を消してしまう。

「退院しちゃったんですか! あのっ、あの人の名前とか……住所などはわかったんですか?」

 病院関係者にくまなく声をかけ、彼についての情報を集める継美は落胆し……てなかった!

「どこに隠れたって絶対に見つけ出しますよぉ! 待っててください!」

 そうして、恐るべきバイタリティで彼の居所を見つけた継美は彼に接触を図る。

「見つけた! よかった…違う人に声をかけちゃってたらどうしようってほんの少しだけ思いました」
「おれの名前をどうして……」
「あ、すみません。お名前は担当の看護士さんに聞いたんです」

 彼は、個人情報漏洩じゃないか……と内心で毒づく。

「——よく おれだと気が付きましたね。こんな格好しているのに……」
「えっと……この間、百貨店ですれ違った時、綺麗な人だと思ってつい不躾にも見つめてしまったんです。その時に、このお顔立ちはもしかしてっ! と思って……」

 さすがに血眼で探していましたとは言えず、継美は言葉を濁しながら小声になっていく。

「もしかして勘……ですか?」
「はい。勘です。直感というか……信じてもらえないかもしれないけど、きっとそうだって確信が…かなりありました」
「かなりありましたって……それは確信ではない気が……ふふっ」

 彼を心配し追いかけていた日々の中で、継美の中に小さな思いが芽生えていた。再会したことで、その小さな芽は一気に成長し続ける。それは……彼も同じことだった。

「おれのことはもう一切調べないでください……あなたを巻き込んでしまうから」

「こんなに誰かを好きになったの初めてだ……」

 二人の想いは何色に交わるのだろうか ——