ホワイトデー♡ミニ・エピソード 瀬名樹

わたしだけのうたごえ

近づいてきた野外フェスの準備で、セットリストについてあれこれ悩んだり、バンドメンバーと打ち合わせたりと朝から忙しそうにしていた樹が、突然ハニカミを浮かべてリビングルームへと手を引いてわたしをみちびく。

「ここに座って♪」とソファにいざなう。
いつもはわたしの隣が樹の指定席なのに、めずらしくダイニングチェアを移動させ、少し離れて正面に座る。

長い脚を組み、咳払いを一つ。手にはウクレレ。
「今日はホワイトデーだから、愛と感謝を込めて…オレの一番大切にしているものを」とシャイな笑顔。
突然、樹の優しいビブラートに包まれた歌声が部屋に響きわたる。

ウクレレから爪弾かれる柔らかな音色とともに彼が歌うのはUpside Rocksの人気曲。 大切な人への生涯の愛を歌ったバラッド♪バンドをバックに奏でるいつものロッカバラッドとはアレンジが異なる。

優しいベルベットのような歌声とそれに呼応するかのような柔らかいウクレレの音色に満たされたこの部屋はさっきまでとは別世界。やはりこの人は音楽の天才、その彼と音楽を今わたしは独り占めしている。この瞬間以上の幸せはないな…と心の中でひとりごと。

夢見るように聴いているうちに曲が終わる。一瞬にも永遠にも感じる時間。

優しく微笑む彼が近付いてくる。
わたしの手にウクレレを渡して優しい声色で紡ぐ。
「これを君に。一緒に弾いて音楽を楽しめたら最高だなって思って♪愛してるよ」と囁いて頬にキス。

照れくさそうに仕事部屋へと踵を返してしまった彼を視線で追いながら、ウクレレを鳴らしてみると最高に幸せな気分にくるまれた。
樹、わたしの最愛のひと…ありがとう♡

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このエピソードはイケカレワールドに無数に存在するマルチバース(世界線)の中の一つで起きた彼女とカレシとのミニエピソードです
チャット本編とは別の世界の出来事だとご理解ください