「ヴァンパイアの花嫁」創作ノート初公開!

「ヴァンパイアの花嫁」創作ノート初公開!

2023ハロウィンストーリー「ヴァンパイアの花嫁」をプレイいただきありがとうございました。皆さまからいただいた貴重なご意見、ご感想は今後の参考とさせていただきます。アンケートにお答えいただいたお礼として創作ノートを公開いたします。ヴァンパイアの花嫁の世界観やマルチエンディングに秘められた制作者の意図他に触れていただき、よりストーリーを味わっていただければと思います。

創作ノートはあくまでも制作準備段階のメモ書きのようなものであり、実際の作品とは異なる箇所があります。また作品に込められた制作者個人の意図やメッセージは、このストーリーにより深みを与えるためだけのものであり、ゲーム運営者としての意見や考えを表明したものではないことを申し添えさせていただきます。

登場人物たちの設定とイメージ(初期段階のもの)

狼男
グリム世界に現れた彼女を一目見て恋に落ちる。口下手で寡黙なため多くを語らないが、行動で愛情を表現するタイプ。無愛想で不器用だが、彼女に拒否されてもめげることなく、絶対に離れないという気持ちを押し通す。狼男本人はなぜこんなにも彼女に惹かれているのかわかっていない。好きなのだから好きという本能的な想いを抱く。 不器用で荒っぽいが、実はとても心優しい。銀髪、普段は琥珀色の瞳(狼に近づくと金色に近くなる)

グリム世界に住んでいる魔物 (元ネタ:ブレーメンの音楽隊) 快適で安全な小屋に見せかけた彼らのアジトに旅人を誘い込んでは、4匹で襲って食べてしまう凶悪獣人集団。音楽隊と言いながら音楽など一切できず、それぞれの持つ楽器は武器を仕込んだ攻撃道具。 ロバ(男)ぼーっとしてる感じ 犬(男)声がデカい。強引 猫(女)やんちゃで我儘 おんどり(男)偉そう、仕切り屋

赤ずきんの少年(元ネタ:赤ずきん)
おばあちゃんに美味しいスープを食べてもらいたくて、材料となる肉を毎日探し歩いている(もちろん自分も美味しく食べる)。銃マニア。使っている銃はライフルを自分で改造したもの。 幼さを感じさせる綺麗な顔立ちをしているが性格は極めてクレイジー。お茶目な口ぶりで相手を小馬鹿にしたような話し方。短気で稚拙なため、思い通りに事が運ばないとすぐに荒れる。荒れた際は大変汚い口調になり禍々しい顔立ちに変貌する。

グリム世界に住んでいる魔物 (元ネタ:ヘンゼルとグレーテル)
グリムの森の中にあるお菓子の家に兄妹二人で住んでいる。 焼殺した魔女を材料にした料理を花嫁(彼女さん)に提供してくる。お菓子の家を食べられると激怒し、食べた人を家の中に誘い込みかまどで焼殺して料理する。 無邪気で残虐。お菓子の家を勝手に食べられるとグレーテルが激怒する (特に窓枠部分のクッキー)。無邪気に調理した魔女の肉を彼女に振舞おうとする。二人は掛け合うようにして会話をする。

グリム世界に住んでいる魔物 (元ネタ:灰かぶり姫(シンデレラ))
グリムの森の中にある大きな城に住んでいる。森の教会へ行くために、灰かぶり姫の城に立ち寄ったヴァンパイアに色目を使い、彼女を邪険に扱う。さらに彼女を攻撃しようとしたため、ヴァンパイアに焼き殺されて灰にされる。残ったガラスの靴がワープのためのアイテムとなっている。攻撃方法は鋭い爪で相手の急所を的確に抉る。 男好きで浮気性。出会う男すれ違う男、すべては自分のものだと思っている。男と見れば飛びついて媚びを売り、すぐに足を開く節操無し。どんな男も自分に夢中だと勘違いしている。

グリム世界に住んでいる魔物 (元ネタ:いばら姫(眠れる森の美女))
自分が大好きナルシスト。世界中の生き物が自分のことを愛していると本気で思っている。家具や城を飾る装飾品を美しい女性で作るのが趣味。その方法は息絶えないように気をつけながらイバラを巻きつけ成形していく。最近の大作は「美女を6人使って作ったソファー」。最新作に彼女の身体を使い壁に生きたレリーフを作りたい。巻き付けたイバラを引っ張ると彼女の新鮮な生き血が滴り、グラスに注がれるという設計を考えている。

3つのエンディング

1.ヴァンパイアを選んだ際の結末

ヴァンパイアは狼男を殺します。そして女性は森の奥の教会でヴァンパイアと花嫁の契りを結び、人間のまま不老不死に。※普通はヴァンパイアに血を吸われたのちヴァンパイアの血を与えられると、その人間もヴァンパイアとなりますが、この物語では「人間のまま」であることが重要なので(グリム世界に蔓延した病の特効薬は「人間の女の生き血」だから)、血を吸う前に教会で花嫁の契りを交わすことにより人間のままでいられる…というような設定。

ヴァンパイアは言います。
「ずっとそばにいて君の生き血を飲み続けられる…♡黄金の血を持つ君を愛してるよ♡」
私自身を愛しているの?それとも病の特効薬である私の血液を愛しているの?
女性はヴァンパイアにそう尋ねようとしましたが、血を吸われる快楽でもう何も考えられません。そうして女性は愛する人と全く同じ姿をしたヴァンパイアに一生血を吸われ続けながら、ヴァンパイアとの快楽の闇へと落ちていきました。

2.狼男を選んだ際の結末

優しい狼男は自ら手を下そうとはしませんでしたが、ちょうど朝陽が昇り、ヴァンパイアが恨みの捨て台詞と共に消滅します。

狼男は女性を愛しているからこそ、元の世界へ逃がしてあげようと思っています。しかし優しく自分を包み込んでくれる狼男の愛情を気に入った女性は「あなたと共にこの世界で生きたい」と狼男に伝えます。狼男は戸惑いながらも彼女を抱きしめ、そっと口づけようとした…その時。女性を追って来た他の魔物が狼男を殺してしまいます。愛する人と全く同じ姿をしたヴァンパイアは消滅、愛する人と同じ優しさで包み込んでくれる狼男までもを失った女性はグリムの世界で一人ぼっちになり、元の世界へ戻ることもできず、魔物に終われる身となってしまいました。そのあと女性がどうなったのかは…ご想像にお任せいたします(赤ずきんに追いかけ回されたあと、いたられながら酷い殺され方をした…かもしれません)。

3.どちらも選ばずにひとりでグリム界を出ていく際の結末

女性はどちらも選びませんでした。
なぜなら性格は違うが愛する人と全く同じ姿をしたヴァンパイア、外見は違うが愛する人と全く同じ性格をした狼男、外見が同じで中身が違う、または中身が同じで外見が違う人は、本当に自分の愛する人と言えるのか?自分を本当に愛してくれてるのは、現実世界にいる恋人なのではないか?…このグリムの世界に真実の愛はないわ、と女性は気づきました。

あるいは自分と一緒にいるヴァンパイアが時折苦しそうにしている様子…グリムの世界で出会った他の魔物たちの自分に対する言動を見聞きして「もしかして病の原因は私なのではないか?」と気づいたのかもしれません。
自分がグリム世界を去ることによって、グリム世界に蔓延した病は無くなり、ヴァンパイアや狼男、その他の魔物達が争わずに済むのでは…?と考えた女性はグリム世界を去ることを選びます。
※ストーリーには、かなり難しいものの、ヒントを各所に紛れ込ませることにより、「どちらも選ばす一人でグリム世界を去る」という第三の選択肢があるのだということが伝わるようにしています。
 
ヴァンパイアは女性の選択を聞いて「逃がすものか」と激怒しました。狼男は静かに頷き、女性に言いました。「元の世界への出口に飛び込め」と。女性は言われた通り出口に飛び込み、元の世界へ戻ることができました。

元の世界で目を覚ました女性は、恋人にグリム世界での話をしましたが。もしかしてヴァンパイアと狼男どちらかの記憶があるのではないか?と思ったからです。しかし恋人は全く記憶がないと言いました。どっちが俺だったんだろうね、と恋人は優しく笑いました。
二人はその後、幸せに生きていきました。

分岐したエンディングに関する創作メモの抜き書き

1.ヴァンパイアを選ぶ

ヴァンパイアを選ぶ結末は、彼女の盲目の愛を貫いた結果とも思えます。いくら普段のカレシと言動が変わっていたとしても、彼女の思い通りの言動をしてくれないカレシと同じ姿をしたヴァンパイアにカレシを重ね(カレシだと思い)、ずっとついて行く!って…意外にすごいことかもしれません。

この盲目的な愛情によって、優しそうにふるまうヴァンパイアの真意を読み取れなかった女性は、自分の好きな恋人の姿をしたヴァンパイアと快楽をむさぼるだけの毎日を送っていくことになります。
ヴァンパイアの真意とは…彼女に優しく接するのは彼女を愛してるわけではなく血液が欲しかっただけ、なのかもしれません。

2.狼男を選ぶ

ヴァンパイアの言動があまりにも普段のカレシとかけ離れているので、一緒に過ごしているうちに「ヴァンパイアは確かに愛を囁いてくれるし、ずっと一緒だよと言ってくれるけど…冷たすぎる!私を包みこんでくれない時がある!私の言いなりにならない!こんなカレシ、いつものカレシじゃないから嫌…」と心の声が聞こえ始める。

そんなとき目の前に現れた狼男。ぶっきらぼうだけど、普段のカレシのように優しく彼女のことを想って接して守ってくれ、自分を大切にしてくれる。狼男のほうが自分を包み込み、何でも言うことを聞いてくれる現実のカレシに似ている…。
一方ヴァンパイアは、仮想現実世界の設定と意識がリンクしてしまっているので、もはや中身はいつものカレシではない。ただのヴァンパイアだわ!となり、「どっちもカレシじゃないなら…じゃあ私は優しい狼男を選ぼう」とヴァンパイア・カレシを裏切ってしまう。

ストーリー中に
ははっ♡おかしなことを聞くね…♡獣人に種類も何も…みんなまとめて汚くて臭い獣だよ♡とはいえ…どの魔物もみんな君を花嫁にしたいと狙ってる どんな手を使って近づいてくるか分からない…(彼女を真っ直ぐに見つめ)いい?俺と約束して…何があっても俺を選んで…
とヴァンパイアが頼むセリフが登場します。このセリフはひょっとして普段のカレシが薄れていく意識の中で必死に呼びかけたものだったのかもしれません。

この選択は狼男への愛の深みというよりは、ヴァンパイア・カレシを裏切ってしまうの愛の軽さに着目。相手を乗り換える行為の代償として両方を失う、つまりは、狼男エンドはヴァンパイアも死ぬし、狼男も死にます。
(狼男が彼女に一目ぼれするのはゲームでそのように設定されているから…実はVRの狼男の優しさに心はありません。VRゲームのプログラムで優しいキャラと設定されているから優しいだけです)。

3.どちらも選ばない

狼男はかっこよくて優しいが、やはり長い時間を一緒に過ごしてきたヴァンパイア(カレシ)を裏切ってまで選ぶことはできないから選択肢から除外しよう。
ヴァンパイアは完全に仮想現実とリンクしてしまい中身はカレシではなくなっているが、外見はカレシだし…、カレシと一緒になれるエンドを選んだほうが良いような気がするなあ…!…けど、ちょっと待って…外見が同じで中身が違うカレシは本当に私のカレシと言えるの?

自分を愛してくれてるのはここではなく現実世界にいるカレシだけなのでは?…この世界(仮想現実「ヴァンパイアの花嫁」)に真実の愛はないわ!と思い出ていく決断を下す。彼女はよく考えて真実の愛を貫いた、という結果となる。

*本創作ノートの転載、転記、URL転送はご遠慮ください。