美女と野獣 姉たちの悪だくみ
ベルが戻ったことは姉たちのところへも知らせがいき、二人はめいめいにご主人たちを連れて駆けつけてきました。実は、姉たちは二人とも、とってもふしあわせでした。
上の姉は、まるで「愛の神」みたいにハンサムな若い貴族と結婚していました。ところがこのご主人は、もともと自分の容貌にたいそう自信があって、朝から晩まで自分の美貌の維持にかかりっきりで、妻の美しさなど軽蔑しきっていたのです。
二番目の姉は才気煥発な男と結婚していました。ところがその才気をそばにいるひとたちみんなの気を悪くさせるような時に限ってふり回すのですから周りの人はたまったものではありません。その上、最初にその槍玉にあがるのが妻である二番目の姉なのですから、まったくしまつにおえないご主人でした。
二人の姉は、まるでプリンセスのように着飾り、しかもむかしよりずっと美しくなったベルを見ると、くやしくてくやしくて歯がみをしたいくらいでした。ベルが姉たちにどんなに優しくしてもむだでした。どんなことをしても、二人のやきもちを鎮めることはできないで、ベルが自分がどれほどしあわせな暮らしをしていたかを語ると、なおさら二人のやきもちは激しくなっていきました。
二人はさっそくベルをおとしいれる計画をたてました。 「ネエおまえ」と上の姉が言いました。「わたしにいいアイデアが浮かんだのよ、あの子を一週間以上ここへとめておくようにしましょうよ。そうすればなにしろ頭の足りない野獣のことだから、あの子が約束を破ったっていってすごく腹を立てるでしょ、きっとあの子をバリバリと食べちまうわよ」 「おっしゃるとおりだわ、お姉さま」と妹のほうが答えました。「それには、あの子をうんとチヤホヤしてやらなければね」
こんな決心をすると、二人は妹にうんと優しいようすを見せたので、ベルは嬉しくって泣き出してしまうほどでした。一週間はアッという間に過ぎてしまって、二人の姉は絶望のあまり髪をむしって、妹の出発を悲しむようなふりをしました。
◯別れを悲しむ姉たちを見て心優しいあなたは
滞在をさらに一週間伸ばす決心を二人に伝えてください